昔から能面を作りたくて・・・。
今年の春、
初めて小面を打上げました。

人&人リレー Vol.01 2001年8月10日号




 
▲お孫さんの大熙〔だいき〕君(3歳)と。


羽生 哲朗

Teturo Hanyuu (66才) A型  三条市生

●観世流林声会 代表 TEL.0256-35-1733

謡暦40年。
幽玄の世界は、奥が深いという。
活版印刷の活字組で養った根気とセンスを人生の武器にして、定年退職後は趣味に生きている羽生さん。
お子さん2人を育て上げ、いまは悠々自適の毎日。
謡に能面制作、そして陶芸など、日々の生活は充実している。
お子さんたちから退職記念にもらったパソコンも大活躍。
謡曲のリスト作成やパンフ作成等に活かしている。
どんなに忙しくても、可愛い孫がくれば遊び相手になる。
お孫さんには、いいお爺さまである。




▲謡の発表会にて。
謡(うたい)を始めたのは、昭和30年頃。
きっかけは、結納の水引を教えてもらいに行ったことが縁で、故諸橋長二先生に謡を教わり、日本の古典世界に触れたこと。
謡の面白さは、一言でいえば幽玄の世界を味わえることですね。
結局謡は、お能の台詞の部分ですから、日本で最も古い伝統芸能のひとつなんです。
謡曲には五流あり、私は観世流をやっています。
観世流の謡は、全体で210番ありますが、趣味で謡えるのは100番くらい。
私のレパートリーは、129番ほどです。
毎週木曜日には中央公民館で『観世流初心者講座』の講師をしています。現在会員は、11人。初心者は、まず思いきって大きな声を出すことが大事。腹に力を入れ腹の底から声を出すようにすると節も憶えやすい。謡では、その役になり切って表現の仕方を自分なりに工夫する。難しいことですが、そこがまた、やみつきになってしまうんですね。
謡曲に興味のある方は、是非一度のぞいてみてください。
毎週木曜日の午後7時から、三条市中央公民館で練習しています。



▲平成12年1月『越後ジャーナル』にも掲載されました。 
 

謡では、一曲のことを一番といって、それが一冊の本になっています。
それぞれの謡は、2〜5人で謡うのが普通で、謡う月が決まっています。
私が使っている謡曲リストは、あいうえお順のため、毎月何を謡うか?また発表会などでどの謡を選ぶか?決めるのに一苦労してたんですよ。
昨年、電脳企画室ZOOM主催の『県央パソコン倶楽部』に入会、関根代表の協力で『観世流謡曲名寄データベース』を約一ヶ月半で完成させました。
データの入力そのものにかかった時間は、約一日でした。
このデータベースは、謡129番のリストを月順、あるいは人数順で表示、印刷できるようになっています。
そのため、月々の謡は何か、何人用の謡かを一目で見ることができます。
パソコンは、やはり便利ですね。
最近は、孫と一緒にゲームなども楽しんでいます。



▲初めて作った小面。面布団は、田中恵美子さんの作品。

今年の春、初めて小面(娘)の能面を打上げました。
謡をやっていたし、昔から作りたかったんです。
しかし仕事をしてる間は、とても手が出せませんでした。
昨年1月有志が集まって『三条面怡会』を作り、それから毎月2回吉川花意先生に指導を受けています。
能面は、昔から大きさ形が厳密に決まっています。
制作には型を使って、まったく同じになるように作って行きます。
しかし出来上がりと、制作者の感性と技量が露わになるから不思議です。
私の小面は、少し黒っぽくなってしまいました。

能面制作は、眼に見えないところに手をかけているのです。
下地の塗りだけで27回。
まず白い胡粉と膠を湯煎で溶いて、薄く塗り、乾かします。
それを3回やって、120番の紙ヤスリをかけます。
その作業を7回、全部で21回行います。
次に朱墨を混ぜた胡粉を塗って、乾かします。
これも3回。
さらにタンポンを使って、薄く黄色をまぶして、乾かします。
この作業を3回。
最後に、茅葺き屋根の天上裏に溜まる黒っぽい液体を、薄く丁寧にまぶして、面の肌に古色を出します。
その後で、墨で眼の縁取りと髪部を描きます。
そして彫刻刀で髪部に三本の毛筋を彫り、唇に朱を入れます。
能面が角度によって、まるで血が通っているように見えるのは、この作業の結果生まれる効果なのです。

素人が能面を作る場合、一作目が一番よい出来になるそうです。
だから初めて面を打つ場合は、ゆっくり、時間をかけて作る方がよいと、先生からアドバイスを受けました。
私は、小面の制作に、丸一年をかけました。
とりあえず満足できる小面を作ることができました。
次は、いま翁の面に取り組んでいます。





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