Vol.8   岩淵 一也



<写真説明> 塩野渕の吊り橋



塩野渕の吊り橋

 塩野渕集落へは国道289号線から「カヌーパークかわせみ」の案内板が示す矢印方向へ進む。案内板の下には「熊出没中危険!」の看板が掲げられ、バス停の時間表には東三条行と笠堀行がそれぞれ日に一本書いてあるだけだ。時々トーンという獣避けの爆音が響く。
「かわせみ」裏手の河原に車を止めたら、数百匹?ものアブが車を取り囲んだ。ガラス越しとはいえ薄気味悪く、これでは外へ出られない。
 
塩野渕橋は二本ある。さっき渡って来たコンクリートの橋と、その上流にある吊り橋だ。幸い吊り橋のところまでアブは追いかけてこなかった。
「昭和三十八年て書いてあるでしょう。三八豪雪の年で、橋の部材をソリに積んで引っ張ってきたもんです」近くにいた、私とほぼ同年齢と思われる男がそう教えてくれた。吊り橋は昭和三十八年三月、さっき渡ってきたコンクリートの橋は五十六年十二月竣工と親柱にあった。
 吊り橋は四本のワイヤーロープで支えられたがっちりした作りだ。幅一・八米、長さ五十六米。左岸に車の通行を遮るためのコンクリートブロックが置かれているが、その角が削り取られている。
 
吊り橋を渡っていくと川の瀬音が近くなる。流れが急だからゴロゴロした石の間で水泡が湧き、それらが合わさって大きな水音になっている。向こう岸のワイヤーには蔓草がまとわりついている。
「水が濁っていて鮎はいないんです。前は釣り人がひしめくようにいたもんですが」橋の上から鯉を見たのでそう言ったら、そんな答えが返ってきた。ダムの下部から放流しているので濁っているのだという。橋の上にいるといくらか涼しく、爆音がよく聞こえる。



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